アクロマートレンズのスペーサーに関して
以前報告した、コルキットKT60の改造版に関して、追加の報告です。対物レンズはスコープタウンから別途購入したD60mm, FL700mmに変更してあるのですが、これのスペーサーが厚いプラスチック版で、ゴーストの原因となっている事は述べた通りです。これをアルミ箔分離式にしたところ、ゴーストも激減したのですが、それに伴って、像も改善された様に感じました。そこで、自作のアクロマートの収差計算プログラムで、レンズのスペーサーの厚みの収差への影響を計算してみました。
口径60mm、焦点距離700mmで設計し、凸レンズと凹レンズの間隔を0.4mmと0.04mmの2種類で計算させたので、その結果を示します。0.4mmというのは、プラスチックリング製スペーサーの実測の0.35mmに対応し、0.04mmはアルミ箔の厚みに対応してで`います。まず、0.04mmの収差図。
横軸は、700mmを0として、そこからの焦点距離の差を、C線(656.27nm)、d線(587.56nm)、e線(546.07nm)、F線(486.13nm)、そしてg線(435.83nm)について計算した結果です。30mmmの横線は、60mmの対物レンズの丁度エッジに相当します。なお、0.04mmというのは、アルミ箔の厚さの代表的な値として用いました。この図は、ほぼ典型的なアクロマートの収差図になっています。g線は大きく焦点距離がずれますね。CとF線、dとe線はほぼ一致です。
さて、これをプラスチックリングでの分離がされて、ゴーストが目立つ場合の数値で計算させてみましょう。スペーザーは、0.4mmとしています。これは実際のプラスチックリングの厚さにほぼ等しい場合です。その結果が、下の図です。
g線は収差が減少しますが、C線とF線、d線とe線は、大きく前方に傾斜し、球面収差が増大しています。購入したままのKT60や、スコープタウンからのレンズをそのままで観望した時の、月面などの印象が、どうも像がすっきりしなかった事と合致しているように感じます。詳細は、以下のホームページで。
http://homepage3.nifty.com/_norisan/astro/achromat.html
なお、この記事やホームページの内容は、あくまで私の持っているアクロマート対物レンズでの話であり、全てのプラスチックリング製スペーサーの対物レンズで共通という事では有りませんし、所有しているアクロマートレンズの具体的設計データを元にしている訳でもありません。その点はご了承下さい。実際、プラスチックリング製スペーサーを入れた方が像が良い、という報告もあります。
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